上げ馬神事で使われた馬って、その後どうなるんだろう。
神事が終わった後、馬は馬肉になるなんて噂もあるよね…。
2023年、4年ぶりに開催された上げ馬神事で1頭の馬が犠牲になり、大炎上した三重県桑名市の多度大社での上げ馬神事。
2024年の今年は2メートルの崖を廃止して、馬たちの安全に最大限配慮して開催されました。
しかし、上げ馬神事で活躍した馬のその後を気にする声も多く聞こえてきます。
上げ馬神事の後、馬はどうなるのでしょうか?
馬肉にされるという噂は本当なのでしょうか?
この記事では、上げ馬神事の歴史や現状、神事後の馬の運命について調査していきます。
- 上げ馬神事の歴史と文化的背景
- 神事をめぐる動物虐待問題の現状
- 神事後の馬の運命と馬肉利用の実態
上げ馬神事の文化的意義とは?神事の背景を探る
三重県桑名市多度町で毎年5月に行われる多度祭の上げ馬神事。
馬に乗った青年騎手が急な坂と約2メートルの土壁を駆け上がるこの神事には、どのような文化的意義があるのでしょうか。
上げ馬神事の背景と意義を探るために、以下の観点から考察していきます。
上げ馬神事の背景には、地域の歴史や伝統、信仰が深く結びついています。
神事の起源と歴史的変遷
上げ馬神事の起源は、暦応年間(1338年-1342年)に近隣の武家によって始められたとされています。
馬の上がり具合で豊凶を占うという現在の形式が確立したのはいつなのか定かではありませんが、江戸時代以降、次第に祭礼が華やかになり、上げ馬神事も発展していったと考えられます。
- 起源は14世紀の暦応年間とされる
- 当初の具体的な形式は不明
- 江戸時代以降、祭礼と共に発展
上げ馬神事が長年続けられてきたのは、祭礼を通じて地域のアイデンティティーを確認し、豊作を祈願する農村の人々の思いの表れと言えるでしょう。
厳しい自然環境の中で暮らす人々にとって、農作物の豊凶は死活問題でした。
そのため、農耕や豊穣に関わる神事が各地で行われ、五穀豊穣を祈願する習俗が根付いたのです。
上げ馬神事も、そうした習俗が地域の伝統として継承されてきた事例の一つと考えられます。
神事を通じて人々は自然の恵みに感謝し、来る年の実りを祈念してきたのでしょう。
伝統を守る一方で時代に合わせた変化も必要だよね
地域における神事の役割と重要性
上げ馬神事は単なるお祭りではなく、地域のコミュニティーを維持し、結束を高める重要な役割を果たしてきました。
神事の準備や運営には多くの地域住民が関わります。
馬の世話、会場設営、祭具の製作など、それぞれが役割を分担し、協力しながら神事を支えています。
- 神事の準備・運営に地域が一丸となる
- 住民同士のつながり・連帯感を強化
- 地域のシンボルとしての誇り
こうした共同作業を通じて、住民同士の結束は強まります。
世代を超えた交流も生まれ、地域の一体感が醸成されていくのです。
また、歴史ある神事を守り継承していくことは、地域の誇りにもつながります。
先祖から受け継いだ伝統を守り、次の世代へと引き継ぐ。
そうした営みが地域の文化とアイデンティティーを育んでいるのです。
人口減少や高齢化が進む現代において、伝統行事が地域の結束を維持する上で果たす役割は小さくありません。
上げ馬神事も、地域の絆を深める貴重な機会となっているのでしょう。
伝統も守っていきたいよね
神事の具体的な進行と儀式内容
上げ馬神事は、毎年5月4日と5日の2日間にわたって行われます。
青年騎手が装束を身につけて馬に乗り、石段脇の坂と約2メートルの土壁を駆け上がるのが神事の見どころです。
坂を駆け上がる地区は全部で6地区あり、各地区から3頭ずつの祭馬が参加します。
2日間の合計で、18頭の馬が坂に挑むことになるのです。
- 毎年5月4日と5日の2日間開催
- 参加する馬は6地区から各3頭ずつ計18頭
- 4日は陣笠裃姿、5日は花笠武者姿の騎手
4日に坂を駆け上がる際、騎手は陣笠に裃姿という出で立ちです。対して5日は花笠に武者姿という、それぞれ趣向を凝らした装束で神事に臨みます。
馬の健闘ぶりで豊作を占うため、馬が勢いよく坂を駆け上がることが期待されます。
しかし急勾配の上、土壁を乗り越えるのはかなりの難易度。
無事に駆け上がれるかどうか、見守る観衆も熱くなります。
上げ馬が終わると、神輿渡御や流鏑馬神事なども行われ、祭りはクライマックスを迎えます。
五穀豊穣と安全を願う人々の祈りは、まさに真摯そのものなのです。
上げ馬神事における動物福祉の問題点
伝統ある上げ馬神事ですが、一方で動物福祉の観点から問題視する声も上がっています。
果たして、上げ馬神事における馬の負担はどの程度なのでしょうか。
馬の福祉と伝統行事のあり方について、考えを深めていく必要がありそうです。
馬に対する負担とストレスの実態
上げ馬神事に参加する馬にとって、急勾配の坂と高さ約2メートルの土壁を乗り越えるのは大きな負担となります。
騎手の扱い方次第では、馬に過度なストレスを与えてしまう可能性もあるのです。
特に問題視されているのが、馬を興奮させるために行われる「馬叩き」です。
本番前に馬の腹部を殴打する様子が度々確認され、動物虐待だと糾弾する声が上がっています。
- 本番前の馬叩きで馬を興奮させる
- 急坂で足を踏み外し骨折のリスクも
石段脇の坂は手入れが行き届いているとは言い難く、石が多く突き出ています。
馬が足を踏み外せば、骨折など重篤な事故に繋がりかねません。
こうしたリスクを考えると、負担は小さくないと言えるでしょう。
また、大勢の見物客を前に、興奮状態で神事に臨むことも、馬にとってはストレス以外の何物でもありません。
普段は静かな環境で過ごしている馬が、突如として喧騒の中に放り込まれるのですから。
伝統を重んじつつ、現代の動物福祉の考え方をどう取り入れていくか。馬の健康と安全を第一に考えた改善策が求められています。
動物愛護の視点は大切にしてほしい
動物福祉の観点から見た神事の問題点
上げ馬神事における馬の扱いは、動物福祉の基本原則に照らし合わせると問題が多いと指摘できます。
「五つの自由」と照らし合わせてみましょう。
「五つの自由」とは、動物の基本的な生理的・心理的ニーズを表した指針です。具体的には以下の5項目を指します。
五つの自由
- 飢餓と渇きからの自由
- 苦痛、傷害、疾病からの自由
- 恐怖および苦悩からの自由
- 正常な行動ができる自由
- 快適な場所で過ごせる自由
上げ馬神事では、少なくとも「苦痛、傷害からの自由」「恐怖からの自由」「正常な行動の自由」が損なわれていると言えるでしょう。
急坂と土壁を駆け上がる行為自体が、怪我のリスクを伴います。
本番前には興奮させるための叩かれるなど、恐怖にさらされている疑いもあります。
また、大騒ぎの中で神事に参加させられることは、馬の自然な行動を妨げていると言えなくもありません。
動物の利用に際しては、五つの自由を可能な限り保障することが求められます。
その点で上げ馬神事には課題があり、抜本的な見直しが必要です。
馬の福祉と向き合う姿勢が重要だね
2024年の開催では何が改善された?
2023年の上げ馬神事では、坂を駆け上る際に馬1頭が転倒骨折し、殺処分されるという痛ましい事故が発生しました。
また、馬に過度な負担をかけている様子も確認され、開催のあり方に対して1000件を超える意見が寄せられました。
こうした批判を受け、上げ馬神事では次のような改善策が実施されることになりました。
- 坂の勾配を緩やかにする
- 2メートルの土壁をなくす
- 石の多い走路を別素材に改良
- 馬の搬送用に馬運車を配備
- 叩く蹴るは即座に退場処分
坂の勾配を緩やかにし、土壁を撤去することで、馬の負担は大幅に軽減されるはずです。
走路の石を取り除くことは、怪我のリスク低減に繋がります。
また、馬運車の配備で事故時の迅速な搬送が可能になりました。
叩いたり蹴ったりした者は即刻退場とする厳罰により、違反行為の抑止が期待できます。
伝統を守りながら馬の福祉にも配慮する。
その両立は簡単ではありませんが、今回の改善策は一つの前進と言えるでしょう。
取り組みの成果が注目されます。
上げ馬神事の馬は馬肉として利用されるのか?
上げ馬神事を終えた馬は、その後どうなるのでしょうか?
馬肉処理される可能性もある。
馬の命が奪われるだけでなく、最期は食肉にされてしまうなんて…と胸が痛む方も多いはず。
しかし一方で、亡くなった馬を無駄にせず活用することにも一定の意義があるという見方もあります。
上げ馬神事に限らず、競走馬の引退後の行方についても触れながら、馬肉利用の是非を考えてみたいと思います。
一般的に馬肉に使用される馬は?
日本で一般的に馬肉として利用されるのは、主に国内で食用馬として飼育された馬や、カナダ・オーストラリアなどから輸入された馬です。
競走馬は引退後に馬肉にされるのでしょうか?
競走馬が馬肉に使用される可能性もある。
調査したところ、競走馬が引退後に馬肉として利用されるケースは比較的少ないですが、まれに存在するようです。
これは競走成績不振、種馬需要の欠如、引退後ケア施設の不足などが理由として挙げられます。
一方、国内の食用馬は専用に育てられ、食肉としての衛生・飼育管理が行われています。
これにより安全で高品質な馬肉の提供が目指されています。
食用馬は一般的に、肉用として育てられた馬が中心ですが、競走馬を含む様々な馬が馬肉として利用されているのが現状です。(ペットフードに使用されることもある)
馬肉の消費には地域性もあり、馬肉料理が盛んな地域では、馬の飼育や輸入が活発に行われています。
馬肉の栄養価と健康への影響
馬肉は日本でもポピュラーな食材の一つですが、その栄養価はどうなのでしょうか。
実は、牛肉や豚肉と比べてもなかなかの高栄養食品なのです。
タンパク質が豊富なのは他の肉類と同様ですが、馬肉の脂肪は融点が低く、人間にとって消化吸収しやすいのが特長です。
タンパク質が豊富なのは他の肉類と同様ですが、馬肉の脂肪は融点が低く、人間にとって消化吸収しやすいのが特長で、必須アミノ酸やビタミン、ミネラルも豊富に含まれています。
- 高タンパク・低脂肪・低カロリー
- 良質な必須アミノ酸が豊富
- 鉄分やビタミンB群も多く含有
健康面から見ると、馬肉は高タンパク・低脂肪・低カロリーで、ダイエットにも向いていると言えるでしょう。
貧血予防に役立つ鉄分も豊富です。
気を付けたいのは、プリン体の多さで、痛風のリスクがある人は控えめにした方が良さそうです。
馬肉利用の倫理的・文化的考察
最後に、馬肉を食べることの是非について、倫理的・文化的な観点から考えてみましょう。
欧米では馬肉を食べる習慣がほとんどなく、むしろタブー視する向きもあります。
一方、日本では馬肉を食用とすることにあまり抵抗がない人が多いようです。
馬肉食を容認する理由としては、「命をムダにしない」「昔から食べられてきた」といった点が挙げられます。
特に日本では古くから馬を食べる文化があり、それが今に続いているという事情もあるでしょう。
命をいただくことへの感謝の念も、肉食を後押ししているのかもしれません。
ただ、だからといって馬肉食が倫理的に問題ないとは言い切れません。
現代の動物愛護の観点からすれば、馬をペットと見なす人にとって、愛玩動物を食べるのは耐え難いことでしょう。
結局のところ、馬肉を食べるかどうかは個人の価値観次第と言えそうです。
倫理的・文化的背景を理解した上で、自分なりの答えを出していくしかないのかもしれません。
いずれにせよ、上げ馬神事における事故を減らし、やむを得ず命を落とす馬を一頭でも減らすことが何より大切です。
人間の都合で命を奪われる馬たちのことを想うと、胸が痛みます。
できる限り犠牲を減らし、死を無駄にしない取り組みを強化してほしいですね。
単に批判するだけでなく、建設的な議論を重ねることで、動物と人間が共生できる社会の実現に近づけるはずです。
一人一人が考えを深めるきっかけになれば幸いです。
まとめ
この記事では、上げ馬神事の歴史や現状、神事後の馬の運命について調査してきました。
- 上げ馬神事の歴史と文化的背景
- 神事をめぐる動物虐待問題の現状
- 神事後の馬の運命と馬肉利用の実態
上げ馬神事は700年以上の歴史をもつ伝統行事ですが、最近では動物虐待の観点から批判の的となっています。
伝統文化と動物愛護の兼ね合いは悩ましい問題だね。
上げ馬神事については、文化の継承と動物福祉の両立という難しい課題があります。
私たちにできることを考えながら、引き続き注視していきましょう。